雪崩
夏道の消えて
山靴の音がする稜線
青氷の斜面を
風たちと対話しながら
一緒に登ってゆく
空の蒼に
雪と氷の世界で
動かない岩棚
雪臂に亀裂が走り
烈しい雪崩が襲う
山は変貌して
私の存在は
無視される
秘密
厳冬の山の尾根道には
蟻も歩かない
襟を立てて
夏も冬もない街を歩く
俺の前を
一眼レフカメラを
片手に女が歩く
バスに乗る
女が座席にいる
闇の中を
西の終点まで走る
シヤッター音に
きずいた俺は
独りの女の
秘密を見つける