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Channel: たろうくん(清水太郎)のブログ
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昔書いていた詩(52) 「顔」 「絵」

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  顔


 校庭に建った杭打機が
 ひどく黒く巨大に映る
 朝霧の中  空に向かって
 直立している
 
 朝の薫りはビルの谷間から
 駅へ続く道に溢れている
 
 薄く霧に覆われた
 樫の樹の下を
 決まった時間に
 同じ方向に男は歩いてゆく
 
 これで良いとは誰も言わないが
 突然、警報音が鳴る
 杭打機がドスンドスンと吠える
 机に向かっている
 男の腹を揺らす
 
 無表情に飯を喰っていたが
 昼休みの終わりのベルも鳴る
 夕方には朝の顔を取り戻して
 帰ってゆく家がある
 

    絵

 とぎれとぎれの
 心の壁の中から
 少しでも語りかけるような
 絵を描いてください
 
 暗い部屋の中でも
 自分に自分が映る
 魔法の鏡のような絵を
 
 でも、哀しみが夜の闇に
 消えてゆきます
 私の持っている絵具で描くには
 単色で十分です

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