顔
校庭に建った杭打機が
ひどく黒く巨大に映る
朝霧の中 空に向かって
直立している
朝の薫りはビルの谷間から
駅へ続く道に溢れている
薄く霧に覆われた
樫の樹の下を
決まった時間に
同じ方向に男は歩いてゆく
これで良いとは誰も言わないが
突然、警報音が鳴る
杭打機がドスンドスンと吠える
机に向かっている
男の腹を揺らす
無表情に飯を喰っていたが
昼休みの終わりのベルも鳴る
夕方には朝の顔を取り戻して
帰ってゆく家がある
絵
とぎれとぎれの
心の壁の中から
少しでも語りかけるような
絵を描いてください
暗い部屋の中でも
自分に自分が映る
魔法の鏡のような絵を
でも、哀しみが夜の闇に
消えてゆきます
私の持っている絵具で描くには
単色で十分です