波
さっと 一直線に
描いた 筆の先から
白い 牙の波が
幾っも 押し寄せてくる
海辺に立てば
波の ざわめきが
聞こえる
遠い夏に
砂浜で 君と
キスを交わしたね
夢のような
記憶を辿れば
明日からも
生きてゆける
貴女と私です
風景
朽ち果て歪んだ
木造船のデッキの窓枠に
私は浜辺を嵌めこむ
砂に埋もれる舗道
その両端に電柱が伸び
潮風に錆びた
鉄製の公衆便所が
海に向かって
口を開けている