$ 0 0 たろうさんの通信塔 多摩川を渡る五日市線のガッタンゴットンの響きが耳に飛び込んでくる 川岸に沿って続いているサイクリング道を黄色いトレーナーやタイヤを引きずって無理に走るレース用のヘルメットの男たちが事務所の垣根越しに見える それを見下ろすように巨大な通信塔が立っているあまりに高いから彼は孤独に違いない 雑木林は葉を捨てる前のため息で柿色に染まっているあんなに暑かった夏も冷えて肥えた野良猫が二匹ゆっくりと庭を横切る 野良猫会が近々かあると事務係長が何となく言う「おい お前 標的にされてるぞ」「知らナイニャン!」黒猫がこっちを見ながら言う