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今書いている詩(775) 「たろうさんの通信塔」

    たろうさんの通信塔
 
多摩川を渡る
五日市線の
ガッタンゴットンの
響きが耳に飛び込んでくる
 
川岸に沿って続いている
サイクリング道を
黄色いトレーナーや
タイヤを引きずって無理に走る
レース用のヘルメットの男たちが
事務所の垣根越しに見える
 
それを見下ろすように
巨大な通信塔が立っている
あまりに高いから彼は
孤独に違いない
 
雑木林は葉を捨てる前の
ため息で柿色に染まっている
あんなに暑かった夏も冷えて
肥えた野良猫が二匹
ゆっくりと庭を横切る
 
野良猫会が近々かあると
事務係長が何となく言う
「おい お前 標的にされてるぞ」
「知らナイニャン!」
黒猫がこっちを見ながら言う

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