残土
団地前の窪地に
工事現場から
残土が運ばれて
1988年1月の太陽に
照らされて
黒く横たわっている
地中に眠っていた彼らに
過去も記憶もない唯
眠っていたそれだけ
今は地表に積まれ
晒され乾いて風化する
土の中の虫たちは蠢いている
初春が近づいているから
ダンプの運転手は
自分の経歴を語らない
黙って降している
僕だけが遠くから
それを眺めている
夢(28)
僕の乗ったバスが
河に落ちた
多くの死人が出て
棺桶から足が出ている
バスは何処かに帰る
途中で行く先を間違えて
河を渡ろうとしたのだ
それは電車の鉄橋の上で
「危ない」と言って僕は
慌てて飛び降り助かった
そこで夢は終わり
夢を引きずる臆病な
僕が今日も目覚める